問題多いコンパクトシティって何?

 

日本の都市では後期高度成長期といわれる1960年代~1970年代に、郊外の住宅開発が積極的に進められました。その間、住宅開発に公共交通網が追いつかず、車社会になっていきました。

それと相まって大店法(*)成立がきっかけで、幹線道路沿いに大型ショッピングセンター・ファミリーレストラン・ファーストフード店などが作られ、駐車場が無料という事もあり、車を持っている人がそちらに集まり、中心市街地の空洞化が各地で見られるようになり、いわゆる駅前シャッター商店街が続出するようになりました。

地価の高い駅前商店街からの固定資産税は、自治体にとって大きな財源を占めましたが、シャッター商店街になってからは徴収できず、財政がひっ迫し出しました。

(*):「消費者の利益の保護に配慮しつつ、大規模小売店舗の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業者の事業活動の機会を適正に保護し、小売業の正常な発展を図ることを目的」とした法律で1973年成立

日本のシャッター通り商店街part1


1990年後半に入って消費者ニーズの高まり・海外資本の日本市場の閉鎖性に対する批判もあり、住民や自治体が中心になって地域の生活環境を重視して大型店の出店を規制・調整する方向に変わりました(2000年大店立地法成立)。
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ところがその後、2000年代になって少子高齢化・人口減少に直面し、現在まで続いています。そこで新たに問題となってきたのが次のような点です。

1)採算が取れず路線バスが減便・廃止になった地区の住民や、郊外に住宅を求めた人達が高齢化し、交通弱者になってしまいました。

2)市街地の人口減少で道路・上下水道のインフラ設備等で投資効率が悪化し、膨大な維持コストがかかり、自治体の財政負担を大きくしています。

3)東北・北海道地方では冬季の除雪費の増大が大きな問題になっています。昨年大雪で首都圏でも山間地区が孤立し、自衛隊の出動・大型除雪車のフル出動等インフラ出費が増大しました。
わずか数戸の部落でも孤立すれば、自治体としては予算枠になくても、出費を覚悟してでも救助しなければなりません。

このような背景のもと国土交通省が音頭をとって、中心部に病院・商店街を含む公共公益施設を集める“コンパクトシティ構想”を打ち出しました。更に中心部に機能が集中すれば相乗的経済効果も期待できると考えました。

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コンパクトシティ構想の具体例

歩いてゆける範囲を生活圏として捉え、市街地のスケールを小さく保ち、コミュニティの再生や住みやすい街づくりを目指すのが、そもそもの発想です。
交通体系も自動車でなく、公共交通、自転車を中心に考えます。
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既に自治体としてコンパクトシティを政策に掲げて進んでいる都市は、青森市、秋田市、仙台市、富山市、浜松市、北九州市などなど多いです。

コンパクトシティの課題

『選択と集中』でコンパクトシティ化を図るという、コンパクトシティ構想の掛け声は良いのですが、住民の視点がどれだけ入っているかが、問題になるのです。 

今までの都市計画は後手後手に回り、現状追認にならざるを得ませんでした。これは地域住民の希望・考えが抜けていたからです。

また地域活性化に対し一般的な処方せんはないと言えます。地域の特性を考え、住民を交えた地域独自のコンパクトシティ構想を練り上げないと成功しません。 

青森市・秋田市は必ずしも成功しているとは言えません(*)。
富山市も第2の夕張市になるとの報道すらあります(**)が、北陸新幹線の開通効果でどこまで構想が実現できるか試されています。

(*):「コンパクトシティ」が都市を滅ぼす――暴走する国土交通省(PART2)、そして何もなくなった
http://d.hatena.ne.jp/baby_theory/20140605/p1

(**):富山市は「第二の夕張市」となるか――「コンパクトシティ」を目指して暴走する国土交通省と富山市長
http://blogos.com/article/54934/

課題として次のような点が挙げられます。

1)駅前シャッター商店街の活性化には、入り組んだ所有関係の整理・統合が容易にできるかが、決め手になります。昔からのしがらみのある商店街では、土地再編成は総論賛成・各論反対に陥り易いのです。

2)中心地に居住区を設けるとすると、どうしても高層住宅にならざるを得ません。地域住民のコミュニティが今迄通り維持できるか疑問があります。また地価の高い中心街の高層住宅に移り住んで、高い固定資産税を払えるかどうかも疑問です。

3)新興住宅等 拡大した郊外住宅に対し、どのように住民を説得するのか、難しい問題が横たわっています。住環境の良い ゆとりある住宅を求めて移り住んだ住民も多く、これらの住民がコンパクトシティ構想に賛同するか疑問です。

4)車に乗る事が当たり前の郊外住宅の住民が、車に代わってバス等の公共交通機関・自転車を利用するかどうか? 人口の多い郊外住宅の住人は、車に慣れ親しんでいるので、駐車スペース・道路幅が狭い中心市街地に見向きもしないと思われます。

因果関係は別として、郊外住宅への公共交通機関のアクセスは衰退しているので、再投資して復活させるのは難しい状況にあります。
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この様な課題にたいして、住民の意向を無視して進めても成功しないことは明白です。郊外の発展を抑えても、中心市街地が再生するとは考えにくいのです。

まとめ

コンパクトシティ構想を打ち出して年数も浅く、十分な検証は出来ていないものの、多くの事例から成功する条件として、

1)公共交通網がある程度充実していること。
2)中心市街地の経済活動が低いものの細々とながらも続いており、色々なイベントも行われていること。
3)観光地・行楽地という資源があり、人々の出入りが盛んなこと。
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が必要だという事がわかってきました。

高齢者の転居は今までのコミュニケーションが無くなる事等、若い人よりもストレスの原因になるので、その事も考えて構想を練らないと難しいかと思います。

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