電力自由化、発送電分離とは?

 

2011年3月の東日本大震災で、東京電力福島第1原子力発電所が、地震・津波の影響で原子炉が溶融し、放射能が拡散する重大事故が発生しました。

東京電力は被災者への諸々の補償、放射能の除染・汚染がれきの撤去、発電所の廃炉準備作業等々、莫大な費用が発生し、一企業体では賄(まかな)えない大事故でした。

東京電力は国が実質オーナーとなり、再建の道を踏み出しています。

どのような経緯でこの考えが出てきたの?

日本の電力供給は、今までずっと「一地域一電力会社という地域独占体制」できました。そこに日本最大の東京電力の原子力発電所の事故が起こったのです。しかも事故当時は電力供給に不安があり、一社だけの供給で大丈夫かという議論が起こりました。

世界を見渡すとイギリスをはじめヨーロッパでは国境を超えた電力取引が既に行われています。わが国でも一般家庭ユーザーが、自由に電力会社を選べる電力自由化の意見が高まってきました。

電力自由化の議論の行き着く先は『発送電分離』、即ち発電事業と送電事業を分離して“自由に競争して発電し、その電力を別会社の送電網で、電力消費者に届ける”という方式です。
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今年6月法律「電気事業法等の一部を改正する法律」(第2弾改正)が成立し、平成29年から平成32年にかけて逐次実施されます。

この法律の成立を見込んで大手電力会社のみならず、異業種企業が相次いで電力小売業への参入を表明しています。

2年後には消費者の選択肢が増えることで、再生可能エネルギーで発電した電力を販売する事業者もどんどん参入してくるでしょう。
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この一地域一電力会社という、競争原理ない供給体制の枠を外すことで、大きなビジネスチャンスが生まれてくると考えられます。

新たに参入電力自由化で、7兆5000億円市場へ

電力自由化のメリット・デメリットは?

電力の小売り自由化は、既に大口需要のある工場やオフィスなどに限って認められていました。これを一般家庭にまで広げて、電力事業会社同士の競争を促すのが、電力小売り全面自由化の狙いです。

★メリット:
1)携帯電話業界は携帯・固定電話通信の契約を通して料金回収の仕組みを持っています。携帯電話料金と一括して請求でき、セット割引も検討しています。

マンション向けには、ケーブルテレビやインターネット回線と電力とのセット販売も一層拡大していくことでしょう。

2)石油元売り業界の中には自ら火力発電所の新増設し、家庭向け販売拠点としてガソリンスタンドを活用することを考えています。電力とガソリンとのセット販売です。
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このように、新規参入企業の大きな特徴は、家庭に食い込む武器をそれぞれ持っていることです。全面自由化で、消費者は自分の生活に適したサービスや料金プランで、提供してくれる電力会社と契約できるようになります。

★デメリット
1)電力供給を市場に委ねるので供給が不安定化(停電等)すると言われています。また小規模発電業者の場合電力価格の吊り上げの恐れもあります。

2)発電・送電・配電と事業者個別に料金を払う必要が出てきます。

3)東京電力が発送電を分離しますと、原発事故の賠償金・補償金などの支払いが滞る恐れがあります。

海外での「電力自由化」

2016年4月以降の日本での「電力自由化」を想像する時、参考にするべきは、すでに、「電力自由化」を経験済みの諸外国の現状です。

アメリカ
アメリカでは州ごとに、現状が違います。卸売り市場と送電線を連邦政府が管轄し、小売市場を各州が管轄しています。ロードアイランド州では、19997年に大口需要家を対象に部分自由化、翌年にはカリフォルニア州などでも全ての需要家を対象とする、完全自由化に踏み切りました。

2004年2月時点では17州とワシントンDCで小売市場が自由化されています。

しかし、カリフォルニア州で2000年夏に大規模停電が起こり、2001年にかけて、電力危機が発生しました。電力会社を発電する会社と電気を売る会社に分けた結果、発電会社はコストがかかるので、発電所新設をあまりせず、よその州も電力に余裕が無くなり、カリフォルニアに回せず、結果大規模停電になってしまいました。カリフォルニア州では、自由化を中断、他の州も電力自由化への法律を廃止したり、実施を延期するところもでてきました。

でも、ペンシルバニア、ニュージャージー、メリーランド地域やテキサス州では、比較的順調に進展しているようです。

イギリス
当初は成功事例と言われていましたが、電力取引の仕組みに欠点があり、電力の小売価格が高止まりしてしまいました。そこで、2001年にNETAという、相対契約を基本にした新しい卸電力取引システムを導入しました。

そして、さらに、スコットランドの市場も統合した、BETTAという新システムも導入する準備を進めています。でも、電気料金はじりじりと値上がりしているようです。

フランス
2007年7月以降は全面自由化が実施されました。原発での発電が80%を占めるフランスでは、燃料の高騰はなく、EUの中でも、2012年下半期にはEUで最も安い部類の料金を維持しています。

ドイツ
基本的に電力会社が民間企業であった為に、私的所有権との関係から、政治的意思だけでは、発送電分離ができません。日本とよく似ていて、参考になります。

ちなみに、北欧では、デンマーク以外、3カ国は、電力会社が国営でした。1998年の自由化により、一時的に電気料金は下がりましたが、その後、高止まりしています。税金や、燃料の高騰などが原因です。

北欧
1991年ノルウェーのエネルギー法可決から、始まった電力自由化に1996年、スェーデン(1992年からすでに、発送電分離していた)が加わり、市場を国際的に統合し、ノルドプールを設立しました。

両国は以前から、送電線を接続していましたが、この時より、国境を越えた自由な市場取引が始まりました。その後、フィンランドとデンマークも相次いで参加し、2000年に4カ国の市場は統合されました。

現況
2015年9月1日、現在では、イギリス・アメリカ(ニューヨーク)などでは、携帯会社のキャンペーンのように、数年契約で低料金確約とか、電力小売り会社の乗り換えで、一か月無料とか顧客取り込みの争奪戦が繰り広げられているようです。

2015年2月9日、現在、フランスでは2007年に完全自由化されましたが、2004年まで国有会社だったEDFが大きなシェアを占めており、電力自由化の過渡期にあるといえます。EDFには適応されている政府に守られた「規制料金」が適用されます。

しかし、新規参入会社の電力を利用する場合には、卸電力市場の変動などがダイレクトに反映される「市場料金」が適用されます。そして、そのメリットがまだ不明瞭なことが、フランスで電力自由化が大きく広がっていない背景です。

ドイツでは2011年の日本での福島原発事故を受けて、国民の80%以上の支持により、脱原発を選択しました。2020年には、再生エネルギー(水力・風力・バイオマス・太陽光)での発電割合が35%、2050年には80%を目指しています。

ドイツは基本的に隣国を含む大きい市場で需給調整をしています。例えば、チェコに安い電力があれば、輸入し、フランスの原発で電力が不足すれば、輸出すると言った具合です。

陸続きで各国がつながり、送電網の整備だけで、電力の融通が利くからです。ただ、フランスの原発から、電力を輸入する場合には、純粋の脱原発ではないと、批判する声もあります。

北欧4カ国では電気料金は、あまり下がらず、デンマークでは風力発電など、再生エネルギーによる発電を推進している為に、ノルウェーの2倍程の電気料金を一般家庭が負担しています。その料金も少しずつ、上昇傾向にあります。

未来の日本においては、どのような「電力自由化」が見られるのでしょうか?

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