難病の新たな治療法 糞便移植とは

 

「あなたのなかのミクロな世界」という海外ドキュメンタリーをご覧になったでしょうか。そのなかで他人の健康な便を移植する治療法が紹介されていました。「糞便移植」って、その文字通りでイメージしたら良いのか?それとも全然違うものなのか?対象となる難病や、移植による成果など調べてみました。




1.「糞便移植」とは?

糞便移植は正式名として、『便微生物移植』と呼ばれています。

2013年にはオランダの研究チームが院内感染の下痢の原因のクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の患者の中でも特に治療が難しい再発患者を治験対象として、従来の“抗菌薬治療”と便微生物移植の対比治験を行ったところ、抗菌薬での治癒率が20~30%程度に対し、便微生物移植では80~90%であったことから、注目を浴びました。

◆日本での取り組み
欧米ではすでに多くの治験例があるようですが、日本ではオランダの研究チームの結果を受けて、第1例目として慶応大学が2014年3月下旬に、潰瘍性大腸炎の40歳代男性の腸内に親族の便を移す移植を行いました。

この治験は、潰瘍性大腸炎の、過敏性腸症候群、腸管ベーチェット病、再発性CDIなどの患者ら45人に実施される予定。安全性の確立のため2~3年かけて進められます。
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◆「糞便移植」の手順。
①患者とドナー(便の提供者)に糞便移植の説明をして同意を得る。
ドナーに関しては、肝炎にかかっていないか、寄生虫はいないかなど、健康状態を徹底的に調べます。

ドナーの選定に関しては、さまざまな議論がなされたようです。決め手になったのは、近い関係のほうが納得できるという心情的な問題だったということです。

ところが、女性と男性の腸内細菌は種類が違うということが最近の研究でわかってきました。腸内細菌の研究はまだまだこれからの分野なのです。

ただ、腸内細菌はコロニーを形成し、よそ者を排除しようとする性質があり、これを「コロナイゼーション・レジスタンス」といいます。だから、できるかぎり同種の腸内細菌を持っていそうな健常人から移植するほうが望ましいのです。

ところが、コロニーに関しては未解明な部分が多いようで、コロナイゼーション・レジスタンスの克服が「糞便移植」のポイントのようですね。

※コロニー形成の謎を解明できたらノーベル賞ものだそうです!

②糞便移植の実施。
検査をパスしたドナーから100gの便を提供してもらう。排便後、できるだけ早い移植がポイント!

ドナーの便と生理食塩水を混ぜて、この液をフィルターでろ過する。

ろ過した液体を注射器に入れて、内視鏡を使って患者の大腸に移植する。

③糞便移植後は?
患者の便にどんな変化があるか、腸内細菌の種類や増え方などを1週目、2週目、4週目、8週目、12週目に検査し、安全性と症状の改善度合いをチェックします。

糞便移植はクロストリジウム・ディフィシル感染症には治療効果が良好なことが報告されていますが、他の潰瘍性大腸炎や炎症性腸疾患のひとつであるクローン病、腸管ベーチェット病などに関してはまだ効果があるかどうかはわかっていません。

まずは、糞便移植の安全性の評価をきちんと行うことが重要とのことです。

他人の便を移植して病気が治る?糞便移植と腸内細菌


※クロストリジウム・ディフィシル感染症
胃腸管内のクロストリジウム-ディフィシル(Clostridium difficile)株によって産生される毒素は偽膜性大腸炎を引き起こす。症状は下痢です。

※潰瘍性大腸炎
大腸粘膜が炎症を起こしてただれ、びらんや潰瘍を形成します。症状は粘血便、下痢、腹痛などです。
20~30代の若年成人に多く発症します。

※クローン病
小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性疾患です。症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。20代に最も多く発症します。

※腸管ベーチェット病
ベーチェット病とは、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性の全身性炎症性疾患です。

◆「糞便移植」に取り組んでいる病院は?
順天堂大学医学部消化器内科、慶応大学病院、千葉大学医学部附属病院、滋賀医科大学医学部附属病院消化器内科 まだまだ少ないですね。

2.「糞便移植」の費用や副作用など

◆費用は?
京都健康クリニック:京都市中京区六角通柳馬場東入 大黒町72-1京都六角Nビル2F
TEL 075-252-7788 FAX 075-252-6911
腸内フローラ移植(便微生物移植):880,000~1,200,000円となっています。

◆副作用はあるの?
アメリカで、便移植法を受けた患者の興味深い症例が報告されました。

32歳の女性は、クロストリジウム菌による感染症でありピロリ菌の感染も確認されました。彼女は複数の抗生物質による治療を既に受けていたため、便移植法による治療を施されることになり、ドナーとして16歳の女性が選ばれました。

その女性は、太っているという点を覗けば、健康体であり、悪玉菌を含む細菌も保有しておらずドナーとして理想的だと考えられました。

合計で600mlの便を移植した結果、無事に彼女の下痢と腹痛は治りました。ただ手術の後、彼女の体重がどんどん増加。その後2年間のカロリー制限や運動療法などダイエットの効果はでてないそうです。逆に、痩せている人の便を移植された患者が何もしないでも痩せていくそうです。

これを“副作用”ととらえるのかどうか…日本での症例が、増えないと何とも言えないですね。

※人の免疫システムの60%以上が腸に集中しています。ということは、腸内フローラ(腸内細菌が多数集まっている場所)が、人間の免疫がうまく機能するかどうかに大きく影響するのです。

そこで、腸内フローラの分析により、花粉症やアトピーをはじめとするアレルギーなどの免疫系病気の解決策を見いだせる可能性があるとのこと!そして、この分野では、本田賢也慶応義塾大学教授が世界をリードしているそうです。

「糞便移植」というチョッと驚く治療名ですが、難病に苦しむ人には朗報以外の何ものでもありません。治療実績を積んで、安全で安心な治療方法になることを願います。

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