日本の漆 中国の漆

 


少し前にNHKの朝ドラで「まれ」を放送していました。その舞台は能登の漆職人の家庭に嫁いだ津村希(まれ)が漆器と、自身の夢であったケーキとコラボしていく、というものでした。

漆器は、単に飾って楽しむものではなく、普段使いをして、痛んだら塗り直しや補修が可能であり、ものによっては高価ではありますが、長く使える分、実はとてもエコなものだということができます。

でも、私にとっての漆の記憶といえば、子供の頃、山登りをしたとき、あの独特の赤い色をした漆の木には触るな、と言われたことぐらいでしょうか。

<漆とは?>


漆とはウルシ科の落葉高木のことで、中国やインドが原産で、日本でも古くから栽培されています。ただし一説には日本が原産とする説もあります。

漆を採取する専門の漆掻き職人が、木を傷めないように熟練の技で掻きとっていきます。漆の樹液は20年ものの木で1シーズンに200グラム程度しか採取することが出来ません。専門家は漆の一滴は血の一滴だという方がいるくらいとても貴重なものです。

職人さんがどれほど大切に扱っても、樹液を収集するには木の寿命があり、あまり樹液を出さなくなった木は切り倒されます。残酷なようですが、切り株からは新しい木が生えてきます。そうやって連綿と漆を大切に守り続けてきたのです。

<漆器の歴史>


漆器の歴史を紐解くと、そこには気の遠くなるような滔々と流れる時間を垣間見ることになります。浙江省の遺跡から発見された紀元前7500年から7400年に制作された木製の弓は現存する最古の漆器と言われています。

日本には8世紀頃に仏教伝来とともに伝えられました。日本に伝わったウルシですが、中国のものと日本のものには特徴に違いがあるようです。

中国と日本では気候風土も異なりますので、当然とは言えますが、中国のウルシは塗膜が柔らかく厚いのに対し、日本のものは固く薄いので蒔絵などが発達したそうです。何よりも価格が中国産のものの数倍から数十倍も高いのです。

漆器職人の方に言わせると、ウルシを変えることは感覚だけでなく道具まで変えなければならないほどシビアなものなのです。日光東照宮の改修工事では今回は日本産ウルシを使用することになりました。

この前の回の改修工事では中国産のものを使用しましたが、日本産のものより残念ながら早く劣化してしまいました。日本産は塗膜が固く、結局は長持ちすることが使用の決め手だったようです。

<ウルシの劣化>

漆器が劣化する最大の原因は、紫外線と乾燥です。貴重な漆器を保存するために博物館などではこれに最大限の注意を払っています。

欧米の美術館などでは漆器に対する専門家が少ないこともあり、ワックスがけを行うこともあるようですが、一時的に光沢が出たようになってもワックスが早く劣化してしまい、素地を傷めることにもなりかねません。また、アメリカなど乾燥の激しい国ではなおのこと保存は難しくなります。

<ウルシの塗り方>


漆器といっても美術工芸品と、普段使いのお椀などとでは大きな違いがあるでしょうから、今回は普段使いのものについて少し述べてみたいと思います。

ウルシ塗りは最近ではDIYもちょっとした人気になっています。このときのもっとも大切なことは、「湿度を持たせて乾燥させる」ということです。

ですから、早く芯まで乾かしたいと、扇風機などを使うのはもっともやってはいけないことです。ゆっくり乾かすことで、表面が平滑になります。ウルシは絵具のようにチューブに入ったものが市販されています。

日本産のウルシが高価になっているということは、漆搔き職人自体の人数が減り、高齢化していることも要因となっています。

たまに美術館などで見る蒔絵の美しさには本当に驚かされます。いにしえから伝わった大切な文化です。一度振り返って見つめてみませんか。

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