ロマ 差別の歴史と今

 

日本人の間では「ロマ」という言葉は耳慣れないのではないでしょうか?

かつては「ジプシー」と称されていた1つの土地に定住することなく暮らしていく、移動型民族を指していましたが、差別的な意味合いを強く含むということで、「ロマ」という名称に変わりました。

【ロマとは?】


「ジプシー」はかつて「エジプトからやってきた人」という意味の「エジプシャン」が転じて「ジプシー」という名称が生まれ、呼ばれていたそうです。

「ロマ」はその流浪民族の中でも最大勢力のロマ族からの呼び名で、ロマ族の起源は北インド・パキスタンに住んでいた、ロマ語を話すインド・アーリア人系の移動型民族です。

近年のDNA鑑定の結果、ロマ族のルーツはインダス文明を築いた民族ともされる、南インドに住むドラヴィダ人なのではないかという説も出てきています。

ロマ語は当初文字を持っていなかったそうですが、ラテン文字で記載されることが多くなり、様々な国を渡り歩いていたことから各地の言語との相互影響が多く、多種多様な方言が今では存在しています。

【ロマの職業】


ロマの人々は、ヨーロッパ諸国にて、固定の店舗で開業することを禁じられていました。主な職種としては下記のような職業があります。

・鍛冶
・金属・工芸品の製造や加工
・旅芸人
・占い師
・薬草の売買

近年では、移動手段が馬車から車に変化し、古くは馬の取引を生業としている人もいましたが、それに伴い、自動車の解体や中古車の斡旋に時代は変わっていっているようです。

【ロマが芸術に影響を及ぼしたものは?】

動画:リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調 S244 2


占いや、音楽、踊りに長けている民族だといえるでしょう。占いは、タロットが有名ですが、起源はロマではないそうで、現在ではイタリアから発祥したおもちゃという説が有力です。

ルーマニア・ハンガリー圏や、スペインではロマの音楽との融合による以下の曲が作られました。

・リストの「ハンガリー狂詩曲」
・ブラームスの「ハンガリー舞曲」
・サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」

ブラームスの「ハンガリー舞曲」はハンガリー古来の音楽と混同されもしました。スペインのアンダルシア地方で有名なフラメンコもロマの踊りが大きな影響を与えています。

動画:スペイン・コルドバ・フラメンコ


情熱的でキレのあるダンスと独特の衣装がエキゾチックで目を奪われますね。

【アメリカに渡ったロマのグループ】


アメリカには、大きく分けて、下記の3つのグループがありますが、お互いに同族意識はないそうです。

一番最初にアメリカに移りすんだロマは、イングランドから移住したロマニチャルと呼ばれる人々。8万人から10万人がテキサス州を中心に全米で暮らしています。イギリス文化が浸透しているため、ロマの語彙が混ざる英語を使用。

1880年代以降にバルカン半島、ハンガリーから移住してきたヴラフ系の人々。言語は、ロマニ語の新ヴラフ系方言を話します。全米に推定50万人で、アメリカのロマの最大グループです。

ロマとしての強固なアイデンティティを保ち、排他的なクンパニアと呼ばれる血縁関係の組織の中で生活していますが、国の社会福祉制度を徹底的に活用している人達だそうです。

最後に、ロマニ語方言を話さないヴラフ系ではない東欧系ロマの諸集団。全米に推定100万人。ヴラフ系ロマからは「バヤシュ」と呼ばれ、多くはロマとしてのアイデンティティを隠し、社会に溶け込んで生活しています。

同じロマでも色々な生活スタイルを持つロマの人達がいるのですね。

【ナチスによる差別】

動画:アウシュヴィッツ強制収容場跡.MOV


流浪の民として生活してきたロマは迫害の歴史でもあります。

ドイツのナチス政権下では、ロマもアーリア系の民族であるにもかかわらず、ドイツ人と異なった生活習慣を持っていたため、「アーリア系の面汚しであり、劣った異民族の血が混じっているに違いなく、放置すればドイツ人の血が汚される」と考えられ、強制移住、強制労働政策をうけました。

更には第二次世界大戦中には、50万人ものロマの人々が殺害されたと伝えられていますが、現在でもロマの戦後補償はユダヤ人の人々よりも不当な扱いを受けています。

【その他の国でのロマの境遇】

また、ルーマニアでは、「生まれながらの奴隷」と称された過去もあり、ロマの差別が根深く、過去には転居、就学、就職、結婚などの規制がおこなわれていました。

21世紀現在に至っては、政府が「国内にロマはいないため、ロマに対する差別問題は存在しない」とロマの存在自体を否定していますが、ルーマニア人とロマの問題は拡大している一方で問題に向き合うことなく棚上げされてしまっているようです。

また、スペインや、フランスに住むロマの人の中には貧困の連鎖で、組織的に罪の軽い子供達を使ってスリなどの窃盗をするグループが存在しますが、多くのロマの人々は真面目に生活しています。

定住者の方が多いのですが、住む土地を提供されても、なお定住の生活を好まなかったり、子供に勉強させようと行政が指導しても、親が学校に子供を行かせたがらない家庭があり、識字率が低いという話もあります。

自由な生き方を好み、それが伝統のロマの人々には定住して生きる人間側が対策を提案をすることでは、この問題は解決しないのかもしれませんね。

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